新自由主義(ネオリベラリズム)と自由主義(リベラリズム)は、180度異なる

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    最近、「新自由主義」の言葉に接することが多くなりました。約10年前に書いたメモです。ご参考までに。                        (2020.9.12) 太田哲二

     

    新自由主義(ネオリベラリズム)と自由主義(リベラリズム)は、180度異なる

     

    (1)未だに、区別されない。

     

    日本人は「新」という文字がつくだけで、プラスイメージを持つらしい。単に、「新しい」というだけで、「良いもの」という評価される場合もある。「自由主義」に「新」が付加されているから、「新しい自由主義」→「今までの自由主義よりも良い自由主義」とイメージするならば、それは、とんでもない間違いである。

     

     そもそも、「新自由主義」と「自由主義」は目指す方向が180度異なっている。しかし、大半の人々は、「新自由主義と言っても、自由主義に『新』がくっついただけで、同類項」と思っている。一般人だけでなく、言論人・政治家の大半も、「新自由主義と自由主義の区別」を知らないみたい。

     

     今の時代、今の政治を語る場合、「新自由主義と自由主義の区別」をしっかり認識することが決定的に重要である。

     時代の混迷の根本原因は、「新自由主義と自由主義の区別」を認識できないことにある。要するに、「味噌と糞」をごちゃ混ぜにして議論しても、混迷増幅。

     

    (2)新自由主義とは、

     

    ゞ固な私有財産主義

      自分(自分の才覚と自分の努力)が稼いだ金は、すべて自分のものと意識。

             → 同率課税(フラット課税)(根本は人頭税)……新自由主義

      自分で稼いだと言っても、運と多くの人のお陰さま稼いだと意識。

             → 累進課税……自由主義

     ※竹中平蔵『経済ってそういうことだったのか会議』で、「理想の税は人頭税」、国家が強盗の役を代行するといった趣旨も語っている。

     

    ∋埔豸桐主義

     

    「市場」(公平な市場)こそが、人間の行為のすべて(企業も教育も医療も環境も国家もすべて)を導く「倫理」である、とする。

    市場への政府(及び団体・社会)の介入・規制は悪である。すべては個人の競争。世の中に存在するのは、個人(家族)だけ。すべては自己責任。国家は最低限の治安を維持すること、および、新自由主義を世界に普及させるために意義がある。

     

    ただし、市場原理主義には「秘密の例外」がある。新自由主義の政権の場合、権力者のお友達(当然、新自由主義者)は、自由競争によらず莫大な利権にあずかる。

     

    新保守主義をともなう。

     

    ○市場原理主義=完全なる自己責任の個人競争。個人(家族)だけを認め、仲間や社会を認めない(友人・仲間とも競争)から、世の中はギスギスばらばら。世の中の統合のため、新自由主義為政者は、非常に倫理・道徳を強調。サッチャーはイギリス病克服のため、さかんに「勤勉」を訴えた。それを聞いた日本人は、単純に良いことだと思ってしまった。

     

    ○市場原理主義を実行すると、スポーツのトーナメントのように、最終勝者は一人、他は敗者となる。つまり、圧倒的多数は貧困層となる。新自由主義だけでは、選挙に敗北する。だから、倫理・道徳を前面に出す。倫理・道徳を説く宗教団体は、新自由主義に好意的になる。ブッシュとキリスト教原理主義。

     

      ※自由主義は、倫理・道徳・内心の自由・宗教に関して中立。

     

    ○倫理・道徳だけでは決定打に不足なので、愛国心を強調。そのため、不必要な戦争すら行う。サッチャーのホークランド戦争。あるいは、戦争危機を演出する。

      ※日本では、自民党が「自虐史観はケシカラン」という、いわば「日本史美化運動」を推進している。(歴史偽造)

     

    ○新自由主義国家を増加させるため、戦争手段も是とする。

     

    新自由主義は、1970年代以降、「小さな政府」、「規制緩和」、「民営化」、「自由な市場」を旗印にして、先進国から途上国まで怒涛の勢いで普及した。

     

    ※むろん、「規制緩和」「民営化」をすべきものも多々あった。

     

    (3)歴史を大雑把巨視的に眺める

     

    ”建制の王侯貴族からの「自由」が近代の出発点であった。フランス革命のスローガンは「自由・平等・博愛」であった。

    政治世界では「民主主義」、経済世界では「自由な市場」を基本にして時が流れていくが、好況・不況、貧富の格差が誰の目にも明確になっていく。とりわけ、1929年の大恐慌では、「自由な市場」では耐え切れない事態となった。

     

    △修海如▲吋ぅ鵐困療仂譴箸覆襦I垓兄期の国債発行による需要創造による不況克服・雇用創造が実行された。世界は、「市場への介入は当然」とみなした。

    たとえば、フランクリン・ルーズベルト(在任193345)は有名なニューディール政策を実施した。また、1941年1月6日、「四つの自由」の演説。「言論と表現の自由」、「信仰の自由」、「欠乏からの自由」、「恐怖からの自由」である。注目すべきは、「欠乏からの自由」である。自由主義にあっては、貧困は国家が積極的に打破すべき対象となったのだ。

    こうして、先進国はこぞって、「市場への介入は当然」、「貧困脱出のため福祉政策」、「貧富の格差是正」へと進んだ。それが20世紀中葉からの自由主義である。

    1950年代、1960年代は、そうした自由主義の時代であった。

      ※福祉国家、中間層増大、労使協調、55年体制、リブ・レバ連合

     

    しかし、1970年代に入って、スタグフレーション(不況時の物価高)の時代になった。ケインズの有効需要政策が、どうも上手くいかない。国債残高や他国から借金が上昇するばかりである。

     

    ぅ皀鵐撻襯薀鵝Ε愁汽ぅ┘謄ー(モンペルラン協会)

     1947年創立。

     オットー・ハプスブルク大公、ハイエク、フリードマンなど。創立当初は、狂信的自由主義者の団体として、見向きもされなかった。しかし、米では「自由」と叫ぶだけで、寄付金が急膨張した。

        

    1968年「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞」が設立された。(本物のノーベル賞ではない。)

    1969年から受賞。1974年ハイエクが受賞。1976年フリードマンが受賞。

       ノーベル経済学賞は、新自由主義普及のため創設されたようだ。

     

    シカゴ大学が拠点となって、新自由主義が急速に普及。(シカゴ学派)

     米共和党は新自由主義経済団体からの献金で、丸ごと新自由主義政党に変質。

     

    ゥ船蠅肇縫紂璽茵璽の実験

     

    ○チリ・クーデター(1973年9月11日)・・・「もう一つの9.11」

     アジェンデ政権→ピノチェト軍事政権(〜1989)

     シカゴボーイ(シカゴ学派の若者)が、ピノチェト軍事政権の経済政策を主導した。

     

    ○1975年、ニューヨーク財政破綻

     ニューヨークは新自由主義政策を展開した。

     

    チリとニューヨークの実験によって、新自由主義の総合メニューが整った。

    イラクでも、シカゴボーイが繰り出した。

     

    ※米国は、1973年、中東(サウジ、クウェート、アブダビ)への軍事介入を計画した。オイルマネーを米ファンドに運用を任せることで、落着。米ファンドは莫大な投資マネーを獲得。グローバルマネーの誕生。

       第1次オイルショック(1973年)

       第2次オイルショック(1979年)

     

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    この2人によって、新自由主義は「世界の潮流」となる。

     

    サッチャー(在任期間1979〜1990)

    レーガン(在任期間1981〜1989)

     

    1989年11月「ベルリンの壁崩壊」

     

    ロシアも中国も、事実上、新自由主義になった。

     

    ※サッチャーの演説「社会などというものは存在しない。存在するのは男、女という個人だけだ。」(つづけて「家族」をつけ加えた。)……サッチャーは、モンペルラン協会の会員だったから、新自由主義の本質をしっかり理解していた。

     

    Э啓由主義の凋落の兆し

     

    ジョセフ・スティグリッツの批判

       

    リーマンショック

     

     

    (4)新自由主義は、政治・経済の総合メニューが完備されている。

     

    スローガン「規制緩和」「官から民」「小さな政府」

     

    原則:「強固な私有財産制」と「市場原理主義」

    ○公的福祉政策・公的医療保険制度・公教育も統制であるから、市場競争させねばならない。公費投入削減を是とする。財政豊富だろうが財政逼迫であろうが、公費投入削減は正義。

      ○格差拡大は自由競争の結果であるから当然であり、正義であり、目的である。「格差拡大は目的」なのだ。

        自己責任、進化論

      ○公的企業の民間への売却。民間委託。

        米国では、「軍隊の民営化」の是非、あるいは、「貧困だから軍へ志願」の是非

      ○労働者の保護も「(労働)市場への介入である」から緩和

     ○均衡財政(福祉削減、公的企業売却……赤字から黒字)

     ○同率減税…財源は公的福祉・教育・医療予算の削減、公的企業の売却

     

    新自由主義の総合メニューには、経済政策以外にも次のものが用意されている。

    ○倫理・道徳の強調。愛国心を絶対視。

         新自由主義は新保守主義(ネオコン)で補完される。

    ○バラバラ社会+失業者増大・貧富拡大→犯罪増加→警察官増員、民間警備会社、防犯カメラ、弁護士増員、厳罰化

        ※日本の弁護士増員や裁判員制度も、この文脈で考えられないこともない。

     

    ○民主主義(議会)への不信→エリート政治……例:経済諮問会議

     

    ※70年代のスタグフレーションによってケインズ流自由主義は行き詰った、とされた。ベルリンの壁崩壊で社会主義・共産主義も消えた。その時、そこにあったのは、「新自由主義の総合メニュー」だけであった。「なんか変だな〜」と思いつつも、それしかなかった。

     しっかり認識すべきは、自由主義の目指した方向と、新自由主義の目指す方向は、まったく逆である、ということである。

     

    (5)新自由主義への総合的対抗理論は、現在、不在である。

     

    ○基本的に議論・模索中。議論は個別政策レベル。

    ○グローバルマネーの規制強化は、どうやら世界的合意に達するかも知れない。

    ○「ダボス会議(世界経済フォーラム)」に対抗する「世界社会フォーラム」……「もう一つの世界は可能だ」


    (6)最後の一言

     日本では、ほとんど、新自由主義と自由主義の区別を意識していない。これが、一番の問題だ。

     

    (参考図書)

      経済学の巨匠(丸尾直美著:生活情報センター刊)

      ネオリベラリズムとは何か(デヴィッド・ハーヴェイ著:本橋哲也訳:青土社刊)

      謀略の思想「反ケインズ」主義(丹羽春喜著:展転社刊)

      歪められた発展と累積債務――世界経済のなかのメキシコ(D・バーキン著:吾郷健二訳:岩波書店)

      ハイエク―自由のラディカリズムと現代(エイモン・バトラー著:鹿島信吾・清水元訳:筑摩書房)

      新自由主義(デヴィッド・ハーヴェイ著:作品社)

      「帝国アメリカ」に近すぎた国々 ラテンアメリカと日本(石井陽一著:扶桑社新書)

      戦後世界経済史(猪木武徳著:中公新書)

     

     


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